<第7夜>『JOKER』鑑賞記

 
 こないだお墓参りの後に、あずさセンセの歯医者に行きましてな。ほんでこれから『JOKER』観ますねんゆうたら、「私も観た」てゆわはって…。
 
「なんやアベックで観たら、帰りはゲンナリするそうですな」
「そうそう、間違ってもポップコーン食べながら観るような映画じゃない。差別っていうか、あんなふうになるのも仕方ないなっていうような、可哀そうで重い作品よ」
「アメコミとかと、ちゃうんでっしゃろ?」
「あたしもそおゆうの興味ないんだけど、バットマンとか知らなくても全然問題ない。むしろ、関係ないって感じよ」

 とゆうわけで、ネタバレは聞かんと、池袋のIMAXに行きましてん…けど、なんですのん、あの劇場?!

 ゲームセンターにカフェにレストランに吹き抜けの円形ロビーにと、なんかこう資本主義経済の恩恵と欲望を見せつけるような、アミューズメントの権化みたいなとこ。12階のIMAXシアターにたどり着くまで、もうほんま時代遅れの田舎モン丸出しで、ウロウロしてもたわ。

 マジで『JOKER』に相応しないわ…って、思たけど、逆説的に捕えたら、これほど相応しい劇場はないんかも…?

 なんせ12階には、コスパ最悪のジャンクフードをオーダーせな座られへんスペシャルラウンジがおましてな。けど、所詮は娯楽施設で、ホテルみたいなセレブ感はおまへん(行ったことないけど…)。

 客層も気取ってはおるけど、こおゆう雰囲気には慣れてへんのが見え見えで、背伸びしてる感じのアベックばっかり…。当然お呼びでない雰囲気やし、しゃーないから無料のオープンスペースに座ってたら、野暮ったい白人男性の2人連れが続いてきて、明らかに場違いな存在感を共有してもたわ。

 で、いよいよ入場になったら、なんと目の前に飼い葉桶みたいなポップコーンをトレイに載せて、しゃなりしゃなりと歩む婦女子が現れてな!! 瞬時にあずさセンセの言葉思い出して、「あんたそれ、一人で食べるん?」て凝視してもた。しかも、なんと革張り(合皮)のプレミアムシートにお座りになって…どおりで優雅な立ち居振る舞いやってんわ~。服は陳腐でオバハンぽいけど。

 そうそう、最前列には介護ベッドみたいな超リクライニングな姿勢で観れる(見上げる?)フラットシートもおましてな。そこにも今風婦女子がお寝そべりになったけど、あんなリラックスした姿勢で鑑賞できるような映画やないのに、大丈夫やろか…?

 場内の入りは、3割ぐらい? ま、IMAXて他の劇場よりほんの数百円割高なんやけど、それだけでこんだけの差が出るんやな。かくゆうこっちは、スペシャルラウンジのジャンクフード食べたり、飼い葉桶みたいなポップコーン買うたり、プレミアムシート選んだりする余計な出費はせえへんけど、音響にはこだわるような種族ですねん。

 それからもぼちぼちと、アベックやメンズが何組か、ドリンクとポップコーン携えて談笑しながら入ってきたけど、あんたらマジで覚悟できてる? どんな映画か解かってる? 選ぶ作品、間違ごおてへん…?  ひとつ隣の席にも、ポップコーン男が来て座るなりポリポリ食べ始めたけど、「あんた、上映中もそれ続ける自信あるん?」

 案の定、開始2分で男の動きは止まりましてん。

 で、作品の感想やけど、ぶっちゃけ思てたとおりで、すこぶる爽快やった!! 問題作とゆうより、あれは秀作であり意欲作やな。

 エンドロールが終わっても、誰ひとり拍手なんかせえへんし、声も出さへん。明るなってから会場見まわしたけど、メンズでさえポップコーン半分以上残して戸惑うてるし、プレミアム婦女子はどんより顔で立ちあがるし、アベックは会話もなしにそそくさと出口へ急ぐし…。

 いやー、もうそおゆう光景目の当たりにして、ほんまスーッとしたわっ!!…て、悪趣味?

 出口では係員が飼い葉桶回収してたけど、なんせポップコーンは残されまくりで、受け取るなりひっくり返して、ザーザーゴミ箱に捨てるの繰り返し…めっちゃ、フードロスやな。
 

f:id:koichiro16560:20191111005831j:plain  活字ばっかりのパンフレット。もうこれは必読の解説書やな(著作権の関係で誌面の写真はNG)


 さて、肝心の内容ですけど、あれほど巧みに自分の暗黒面にアプローチして来るとは、予想だにしてへんだ…。

 思い起こせばアーサーほどではないにしても、面と向かって不躾な事ゆわれたり、陰でこそこそ噂されたり、いじわるな訳知り顔で尋ねてきたりする輩はぎょうさんおった(今もおるし、これからもおる)。さすがに暴力を振るわれたことはいっぺんしかなかったけど、そおゆう過去の忌まわしい記憶を引き出して、共感を誘う作品やった。ま、誰しも多かれ少なかれ、そおゆう心境になるとは思うけど…。

 もちろん、全然ピンとけえへんとか、おぞましいとか、げんなりとか、観たくないとか、金返せとか、低評価の人もおるやろ。けど、むしろそおゆうご連中の方が、おっちゃんは怖い。そおゆう輩こそが、アーサーみたいに無力で気弱で優しい人間を、傷つけ追い詰めてきたんとちゃうか? しかも、うすら笑いしながら、無意識のうちに…。

 した方、ゆうた方は忘れても、された方、ゆわれた方は、一生忘れへんとゆうことを、改めて痛感させられた。そおゆう意味では、辛いし耐えがたい一面もある。

 とにかく、映画を娯楽として捕えてる人には、おススメしまへん。ディズニーランドや24時間テレビ(27時間?)が大好きな人とか、SNSにはご自慢しかUPせえへん、Happyなことにしか「いいね」でけへん人とかも…。悪いこと言わへんから、やめときなはれ。自分の暗黒面えぐられて、嫌な気分になること請け合いや。

 ま、あえて上から目線でゆわしてもろたら、感性の鈍い人や思慮の浅い人には、理解も実感もでけへんとゆうこと。それはそれで、幸せなやと思う。けど、こんだけヒットして賛否両論なんは、そんだけ人の心に刺さってるんやで。  

 今の日本ではあそこまでせえへんけど、もしゴッサムシティにおったら、自分も暴動に加担してるとは思う。ってゆうか、「革命に参加」やな。

 ちょびっとだけ具体的に書いたら、作品全体の構成としては二つ世界が同時進行でシームレスに描かれてて、そこが観る人を混乱させる。IT系のサラリーマンがホームの階段で銃殺されるのに周りに誰もおらんとか、暴動の激化があまりに急過ぎるとか、金持ちのマダム(バットマンのおかんらしい)の扮装が、毛皮に真珠とゆう、実に解かりやすい描かれ方やったとか…。そおゆう理由が、後で解かる。

 それにしても、あのラストシーンは実に意味深やな。あれで、かろうじて善の領域に、作品を位置付けてるつもりなんやな。監督が「政治的な意味はない」てゆうんも、ごもっとも。けど、それさえも裏があるように感じるのは、僕だけやろか…?

 自分としては、心ある若い人には観て欲しい作品。今度はそおゆう人物と一緒に観て、ぜひとも感想を聞きたい心境ですねん。